
「英語に自信がないのに、会社からアメリカ駐在を命じられた……」
「会議で何を言っているのか全然分からない」
「この状態で3年、5年とアメリカで働けるのだろうか?」
アメリカ駐在が決まったものの、英語に自信がなく、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
私も同じでした。
もともと英語が得意で、海外で働くことを目標にしていたわけではありません。
会社からアメリカ駐在の話があり、
「自分の英語力で本当に大丈夫なのか?」
という不安を抱えたまま渡米しました。
そして実際にアメリカの会社へ出社してみると、その不安は的中します。
本当に英語が分かりません。
現地スタッフ同士の会話は速すぎる。
会議では何を話しているのか分からない。
突然話しかけられると頭が真っ白になる。
ランチの雑談にも入れない。
電話なんてできれば取りたくない。
日本では普通に仕事をしていたはずなのに、アメリカに来た途端、
「自分はこんなに仕事ができなかったのか……」
と自信を失いました。
仕事を終えてホテルやアパートに帰るころにはクタクタです。
仕事量が多いからではありません。
一日中、分からない英語を必死に聞いているだけで疲れるのです。
部屋に帰って一人になる。
日本の家族や友人のことを考える。
日本なら普通に会話できる。
日本なら普通に仕事ができる。
そんなことを考えていると、
「日本に帰りたいな……」
と思う日もありました。
ところが、不思議なことに毎日会社へ行っていると少しずつ変化が起こります。
振り返ってみると、アメリカ駐在生活の中で、
「英語が一番伸びている!」
と感じたのは、駐在開始直後の最初の2週間でした。
もちろん、2週間で英語がペラペラになったわけではありません。
それでも、
「昨日まで聞こえなかった単語が聞こえる」
「自己紹介なら考えずに言える」
「聞き返すことが怖くなくなる」
「簡単な雑談なら少し続けられる」
「スーパーでの会話に緊張しなくなる」
という小さな変化が次々に起こります。
この記事では、英語に自信がない状態でアメリカ駐在を始めた経験から、
なぜ最初の2週間で英語が一気に伸びたように感じるのか、そして駐在開始直後のつらい時期をどう乗り越えればいいのか
について紹介します。
今まさにアメリカ駐在が始まり、
「自分はここでやっていけないかもしれない」
と思っている方にも、ぜひ読んでもらいたいと思います。
駐在初日|想像以上に英語が分からなかった
アメリカの会社へ初めて出社した日のことは、今でもよく覚えています。
「Hi! Welcome!」
最初のあいさつくらいなら分かります。
自己紹介も、日本で準備してきた内容なら何とか話せます。
問題はその先です。
自己紹介が終わった瞬間、現地スタッフが普通のスピードで話し始めます。
すると、
急に何を言っているのか分からなくなります。
英語教材のようにゆっくり、はっきり話してくれるわけではありません。
知っている単語は聞こえる。
でも文章になると意味が分からない。
何か質問されたので、とりあえず、
「Yeah...」
と答える。
相手は納得したように話を続ける。
でも心の中では、
「今の質問、本当にYesでよかった?」
と不安になります。
そして会議。
これがさらに大変でした。
一人の英語を理解するだけでも大変なのに、複数の人が次々と話します。
専門用語が出る。
誰かが発言する。
別の人がかぶせて話す。
突然みんなが笑う。
でも、自分だけ何がおもしろいのか分からない。
一つの文章を理解しようとしている間に、会議はどんどん先へ進んでいきます。
日本では会議で意見を言ったり、判断したりしていたのに、
アメリカでは、
「会議の内容を理解するだけで精一杯」
になりました。
英語ができないと「仕事ができない人」になったように感じる
駐在開始直後に一番つらかったのは、英語が分からないことだけではありません。
自分の仕事の能力まで下がったように感じることです。
日本では経験を積み、後輩から質問されることもあった。
会議でも普通に意見を言えた。
お客様に説明することもできた。
ところがアメリカへ来ると、
質問したいのに英語が出てこない。
知っている内容なのに発言できない。
雑談にも入れない。
話を振られても、すぐに答えられない。
30代になり、日本ではある程度仕事ができるようになったと思っていたのに、
突然、新入社員に戻ったような感覚になります。
すると、
「自分は駐在員として役に立っているのだろうか?」
「会社は人選を間違えたんじゃないか?」
「こんな状態が何年も続くの?」
と考えてしまいます。
でも、ここで一つ知っておいてほしいことがあります。
この状態はずっと続きません。
私の場合、わずか2週間でも明らかな変化がありました。
初日と2週間後では、これだけ変わった
英語力をTOEICの点数だけで測れば、2週間で劇的に変わるわけではないでしょう。
でも、
「英語を使ってアメリカで生活する力」
は明らかに変わりました。
初日は、
「何を言っているのか分からない」
だったのが、
2週間後には、
「全部は分からないけど、何の話かは分かる」
に変わります。
初日は、
「話しかけられたらどうしよう」
だったのが、
2週間後には、
「分からなければ聞き返せばいい」
に変わります。
この違いはかなり大きいです。

「2週間で英語がペラペラになるわけではありません。それでも『分かること』『言えること』『できること』は確実に増えていきます。」
図を見ると分かるように、最も大きく変わるのは、
「英語ができるかどうか」ではなく、「英語に対する怖さ」
なのだと思います。
最初は英語を話すこと自体が怖い。
でも毎日使っていると、
「間違っても何とかなる」
「聞き返しても大丈夫」
と思えるようになります。
この変化が、その後の英語力にも大きく影響しました。
なぜ最初の2週間で英語が伸びるのか?
では、なぜアメリカ駐在の最初の2週間はこれほど変化を感じるのでしょうか。
私の場合、大きく5つの理由がありました。

「英語力そのものより、英語を使う量と環境が大きく変わることが、最初の急成長につながります。」
理由① 英語を使わないという選択肢がない
最大の理由はこれです。
英語から逃げられません。
日本にいると、
「今日は疲れたからオンライン英会話はやめよう」
ができます。
英語が分からなければ日本語で検索できます。
外国人との会話を避けても、日常生活は困りません。
でも、アメリカでは違います。
会社へ行けば、
- 上司へのあいさつ
- 同僚との会話
- 会議
- メール
- ランチ
- 電話
すべて英語です。
仕事が終わっても、
スーパー。
レストラン。
ホテル。
銀行。
携帯電話。
車。
住居の手続き。
全部英語です。
つまり最初の2週間は、
朝から晩まで英語のインプットとアウトプットを繰り返している状態
になります。
最初は本当に疲れます。
でも、この環境が英語を「勉強するもの」から「生活するために使うもの」へ変えてくれました。
理由② 同じフレーズを何度も使う
駐在開始直後は、意外と同じ会話を何度もします。
特に多いのが自己紹介です。
「Where are you from?」
「When did you arrive?」
「How long will you be here?」
「Is this your first time in the U.S.?」
初対面の人に会うたび、同じような質問をされます。
最初は答えるだけでも大変です。
ところが5回、10回と同じことを話していると、だんだん考えなくても言えるようになります。
仕事でも同じです。
「もう一度言ってください」
「少しゆっくりお願いします」
「確認させてください」
こうした表現を毎日使います。
日本で勉強していたときは、
覚える → 使う
でした。
アメリカへ来てからは、
使う → また使う → 気付いたら覚えている
に変わりました。
英語は反復が大切だと、身をもって実感しました。
理由③ インプットとアウトプットの密度が高い
日本で英語を勉強していたころは、
英語を聞く時間と話す時間が分かれていました。
通勤中にリスニング。
夜にオンライン英会話。
休日に単語を勉強。
でもアメリカでは違います。
相手の話を聞く。
分からない。
聞き返す。
もう一度聞く。
理解する。
自分の意見を言う。
また質問される。
これを一日の中で何度も繰り返します。
つまり、
インプット→アウトプット→修正→もう一度アウトプット
のサイクルが非常に速いのです。
英語を「覚えてから使う時間」がありません。
その場で使うしかありません。
この密度が、最初の2週間の成長を大きくしたのだと思います。
分からない英語は「聞き返す」が正解
ここで、駐在開始直後の方に一番伝えたいことがあります。
分からないのに「Yes」「OK」で乗り切らないことです。
私は最初、聞き返すのが恥ずかしくて、
「Yeah...」
「OK...」
と答えてしまうことがありました。
でも仕事では、これは危険です。
理解していないのに「分かった」と相手に思われるからです。
英語が聞き取れなければ、
聞き返せばいい。
それだけです。
ただ、駐在直後は、
「聞き返したいけど、何て言えばいいの?」
という状態になると思います。
そこで、最初に覚えておくと便利なフレーズをまとめました。

「聞き返すことは失礼ではありません。仕事では、分かったふりをするより確認する方が大切です。」
最初から全部覚える必要はありません。
個人的には、
Could you say that again, please?
これ一つでもいいと思います。
少しゆっくり話してほしければ、
Could you speak a little more slowly, please?
理解できているか確認したければ、
Let me make sure I understand.
これだけでも、かなり仕事がしやすくなります。
英語が苦手な駐在員に必要なのは、
「全部聞き取る力」より、「分からなかったときに対処する力」
なのかもしれません。
理由④ 失敗することが当たり前になる
駐在開始直後の私は、
英語を間違えることが恥ずかしい
と思っていました。
会社から派遣されている駐在員なのだから、
「英語くらい話せないといけない」
という気持ちもありました。
だから頭の中で正しい英文を作ってから話そうとします。
でも、会話は待ってくれません。
考えているうちに話題が変わります。
そして数日すると気付きました。
周りは、こちらが英語のネイティブではないことを最初から分かっています。
文法を間違えてもいい。
単語だけでもいい。
発音が日本人でもいい。
それより、
何を伝えたいのか
の方が大切です。
一度この感覚を持てると、英語を話すハードルが一気に下がりました。
理由⑤ 「通じた!」という小さな成功体験が増える
最初の2週間は失敗も多いですが、同時に小さな成功もたくさんあります。
レストランで注文できた。
スーパーで商品の場所を聞けた。
同僚との会話が少し続いた。
会議で一度だけ発言できた。
自分の英語を相手が理解してくれた。
同僚を笑わせることができた。
一つひとつは大したことではありません。
でも、
「自分の英語でも通じた!」
という経験は、想像以上に自信になります。
すると、
「英語を話したくない」
から、
「もう少し話してみよう」
に変わります。
話す。
失敗する。
覚える。
また話す。
今度は通じる。
このサイクルが、最初の2週間はものすごいスピードで回ります。
最初の2週間は周囲が一番話しかけてくれる
もう一つ、駐在直後だからこそのメリットがあります。
最初は現地スタッフが向こうから話しかけてくれることです。
新しい日本人駐在員が来れば、相手も興味を持ちます。
「日本のどこから来たの?」
「アメリカは初めて?」
「家族も来るの?」
「日本ではどんな仕事をしていたの?」
「アメリカで何か食べた?」
日本について聞かれることもあります。
自分がよく知っている日本の話なら、英語が苦手でも比較的話しやすいと思います。
これは、
現地スタッフが無料で英会話の機会を作ってくれているようなもの
です。
ただし、この期間はずっと続きません。
2週間、3週間と経つと、
「新しく来た日本人」
から、
「いつもの同僚」
になります。
相手も通常業務に戻ります。
だから、最初の2週間に話しかけられたら、
英語が間違っていても、とにかく会話してみる。
これはかなり大切だと思います。
3週目から「英語が伸びなくなった」と感じる
最初の2週間を過ぎると、今度は別の悩みが出てきます。
「最近、英語が伸びていない気がする……」
という感覚です。
でも、これは英語力が伸びなくなったとは限りません。
最初の変化が大きすぎただけです。
初日は、
「まったく聞こえない」
から始まります。
そこから、
「知っている単語が聞こえた」
だけでも大きな成長に感じます。
ところが生活に慣れてくると、
いつもの会社。
いつもの同僚。
いつものスーパー。
いつものレストラン。
使う英語も固定されてきます。
すると、最初の2週間ほど大きな変化を感じなくなります。
ここからは、
「生活するための英語」から「仕事で成果を出すための英語」へ進む時期
だと思います。
会議で自分の意見を伝える。
プレゼンする。
現地スタッフと交渉する。
冗談を理解する。
雑談を続ける。
こうした英語は、2週間では身につきません。
私自身も、その後長い時間をかけて英語と向き合うことになりました。
2週間でペラペラにならなくても大丈夫
ここは誤解してほしくありません。
アメリカに2週間住んだからといって、
英語がペラペラになるわけではありません。
2週間後でも、
会議が分からない。
電話が怖い。
ネイティブ同士の雑談についていけない。
言いたいことをうまく英語にできない。
ということは普通にあります。
それでも、
「英語が分からないことへの恐怖」
は少しずつ小さくなります。
そして、
「分からなかったら聞き返せばいい」
「伝わらなかったら別の言い方をすればいい」
「最悪、紙に書けばいい」
「あとでメールで確認すればいい」
と思えるようになります。
つまり最初の2週間で身につくのは、
英語力そのものだけではありません。
「英語が分からなくても何とかする力」
です。
私は、これこそが駐在開始直後に得られる一番大きな成長だと思っています。
ホームシックになるほどつらいなら、最初の数日だけで判断しないでほしい
アメリカ駐在開始直後は、本当に疲れます。
仕事で英語。
ランチでも英語。
スーパーでも英語。
テレビをつけても英語。
そして日本にいる家族や友人とは簡単に会えません。
一人で部屋に帰ると、
「日本だったらこんなに苦労しないのに……」
と思うことがあります。
日本に帰りたくなることだってあるでしょう。
でも、駐在開始から数日しか経っていないのであれば、
その数日だけで「自分には海外駐在は無理」と決めないでほしいです。
1日目と5日目は違います。
5日目と10日目も違います。
10日目と14日目でも違います。
昨日聞き取れなかった言葉が、今日は聞こえる。
昨日言えなかったことが、今日は言える。
昨日怖かったスーパーでの会話が、今日は普通にできる。
そんな小さな変化が少しずつ積み重なります。
英語ができるようになったというより、
「アメリカで生活している自分に慣れてくる」
という表現の方が近いかもしれません。
最初の2週間でやってほしい4つのこと
特別な英語教材を何冊も買う必要はありません。
最初の2週間は、それよりも実際に英語を使うことを優先した方がいいと思います。
① 分からなければ必ず聞き返す
分かったふりをしない。
仕事では特に重要です。
② 短くてもいいから自分から話す
完璧な文章を作ろうとせず、
「How was your weekend?」
くらいでも十分です。
③ その日に困った表現を一つだけ覚える
一日50単語覚える必要はありません。
今日言えなかった表現を一つ調べて、翌日使ってみる。
これを繰り返す方が実践的です。
④ 一日一つ「できたこと」を見つける
今日は会議で一つ聞き取れた。
今日は同僚と30秒話せた。
今日は一人でレストランへ行けた。
小さなことで構いません。
最初の2週間は、
「できなかったこと」より「昨日よりできるようになったこと」
を見る方が、気持ちも楽になります。
【まとめ】最初の2週間は「耐える期間」ではなく「慣れていく期間」
英語ができないままアメリカ駐在が始まる。
これは想像以上に大きなストレスです。
特に30代になり、日本ではある程度仕事ができるようになった状態から、
「言葉が分からない新人」
のような状態に戻るのは、精神的にもきついと思います。
会議が分からない。
自分の意見を言えない。
雑談に入れない。
仕事ができなくなったように感じる。
部屋へ帰ったら日本が恋しくなる。
でも、それは、
あなたの仕事の能力が突然なくなったわけではありません。
これまで日本で身につけてきた知識や経験を、
まだ英語でうまく表現できないだけです。
最初の2週間は、
- 英語から逃げられない
- 同じフレーズを何度も使う
- インプットとアウトプットを繰り返す
- 失敗することに慣れる
- 「通じた!」という経験が増える
という環境が一気にそろいます。
だからこそ、英語に自信がない人ほど変化を感じやすい期間です。
もし今、アメリカのホテルやアパートで一人になり、
「日本に帰りたい」
と思っていたとしても、それだけで駐在生活全体を判断する必要はありません。
今日の会議がほとんど分からなくてもいい。
ランチの雑談に入れなくてもいい。
聞き返してもいい。
変な英語を話してもいい。
まずは一日ずつ会社へ行ってみてください。
2週間後、英語がペラペラになっていることはないと思います。
でも、
「初日より聞こえる」
「初日より話せる」
「初日ほど英語が怖くない」
そんな自分に気付くはずです。
アメリカ駐在の最初の2週間は、
「自分の英語力のなさを思い知らされる期間」であると同時に、「自分でもアメリカで何とかやっていけるかもしれない」と思い始める期間です。
だから、最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。
最初の2週間は「耐える期間」ではなく、「アメリカで働く自分に慣れていく期間」。
昨日より一つでも「できたこと」が増えていれば、それで十分です。





