
「夫の海外駐在が決まった。」
その一言で、私たち夫婦の生活は大きく変わりました。
夫にとって海外駐在は、キャリアアップにつながる大きなチャンスです。
海外で仕事を経験し、現地の社員と働き、新しい役割に挑戦する。会社から期待されて選ばれたことを考えれば、家族として喜ぶべき出来事だったのかもしれません。
一方で、妻にとっては、必ずしも前向きなことばかりではありませんでした。
夫の海外駐在について行くために、それまで働いていた会社を退職することになったからです。
毎朝決まった時間に起き、会社へ行き、同僚と話し、仕事を終えて帰宅する。
そんな当たり前の日常を手放し、家族や友人とも離れ、慣れ親しんだ日本での生活を離れることになりました。
妻は昔から海外旅行が好きで、結婚前には20か国ほど訪れた経験があります。
ただし、その多くはツアー旅行でした。
航空券やホテル、現地での移動、観光先などは、旅行会社やガイドに任せることができます。
数日間の海外旅行であれば、英語をほとんど話せなくても何とかなります。
しかし、海外で暮らすとなると話は別です。
スーパーで買い物をする。
レストランで注文する。
病院を予約する。
宅配便を受け取る。
アパートの管理会社へ連絡する。
生活に必要なことを、基本的には自分で対応しなければなりません。
妻は日常会話ができるほど英語を話せたわけではなく、性格もどちらかといえば内気です。
日本にいたときから、自分から知らない人へ積極的に話しかけることは得意ではありませんでした。
新しい場所へ一人で出かけたり、その場にいる人とすぐに仲良くなったりするタイプでもありません。
これといった趣味もなく、仕事を辞めた後に「時間ができたらやりたい」と思っていたことも、特にありませんでした。
そんな妻が、知り合いが一人もいないアメリカで生活することになったのです。
渡米前は、楽しみよりも不安の方が大きかったと思います。
「毎日、何をして過ごせばいいのだろう。」
「英語が話せないのに、一人で生活できるのかな。」
「友達はできるのだろうか。」
「夫は仕事で忙しくなるだろうし、一人ぼっちになったらどうしよう。」
実際、アメリカへ来て最初の数か月は、想像していた以上に孤独な生活でした。
朝、夫を送り出した後は、静かな家に一人。
日本では当たり前だった「会社へ行く」という予定もありません。
気がつけば夕方になり、「今日は誰とも話さなかった」という日も少なくありませんでした。
しかし、約8年間のアメリカ駐在生活を振り返ると、妻は今、
「あの時間があったからこそ、自分の世界が広がった。」
と話しています。
最初から英語が話せたわけでも、社交的だったわけでもありません。
特別な趣味があったわけでもありません。
それでも、小さなきっかけを積み重ねることで、少しずつ自分なりの海外生活を作ることができました。
この記事では、家族帯同で約8年間アメリカに駐在した私たち夫婦の経験をもとに、
- 駐在妻が最初に感じる孤独や喪失感
- 子どもがいない駐在妻のリアルな過ごし方
- 趣味がなくても始められること
- 日本人や現地の友人を作る方法
- 英語が苦手でも海外生活を楽しむ考え方
- 仕事を辞めた時間を人生の財産に変える方法
を紹介します。
「駐在妻になったけれど、どう過ごすか分からない。」
「会社を辞めてまで来たのに、毎日何もしていない。」
そんな悩みを抱えている方に、少しでも参考になれば幸いです。
駐在妻が一番つらいのは「暇」ではなく、自分の居場所を失うこと
駐在妻というと、周囲からは、
「海外でゆっくり暮らせていいね。」
「仕事をしなくても生活できるなんて、うらやましい。」
「毎日自由な時間があって楽しそう。」
と言われることがあります。
たしかに、夫の会社から家賃補助や海外手当が支給され、経済的な負担が軽くなる家庭もあります。
しかし、自由な時間が増えたからといって、必ずしも心まで自由になるとは限りません。
日本で働いていた妻にとって、会社は給料を得るためだけの場所ではありませんでした。
毎朝起きる理由があり、決まった時間に出勤し、同僚と話し、自分の仕事をこなす。
誰かに頼られたり、仕事が終わったときに達成感を得たりする。
そこには、社会とのつながりと、自分なりの役割がありました。
ところが海外へ来ると、それまで当たり前にあったものが一度になくなります。
会社員ではなくなる。
同僚がいなくなる。
自分の収入がなくなる。
毎日の予定がなくなる。
夫は新しい職場で忙しく働いている一方、自分は家で何をしていいか分からない。
その状況で、
「私は夫についてきただけなのではないか。」
「自分の人生が止まってしまったように感じる。」
「会社を辞めた選択は本当に正しかったのだろうか。」
と思ってしまうのは、決して不自然なことではありません。
駐在妻がつらいと感じるのは、単純に時間が余っているからではありません。
それまで持っていた社会とのつながりや、自分の役割を失ったように感じるからです。
特に、夫の駐在のために自分の仕事を辞めた場合、その喪失感は簡単に言葉では表せません。
夫に対して、
「あなたのために会社を辞めたのに。」
という気持ちが出てくることもあるでしょう。
夫が仕事で忙しく、妻の不安に十分向き合えない日が続くと、その思いはさらに強くなります。
まず大切なのは、その気持ちを否定しないことです。
「せっかく海外へ来たのだから、楽しまなければ。」
「駐在生活を不満に思う私は、わがままなのではないか。」
と無理に前向きになる必要はありません。
仕事を辞め、家族や友人と離れ、言葉の通じない国へ移ったのです。
不安になったり、孤独を感じたりするのは、ごく自然な反応です。
最初から海外生活を楽しめなくても問題ありません。
まずは、新しい環境に慣れるだけでも十分です。
駐在妻が孤独になりやすい理由
海外生活で一番困ることを聞かれると、多くの人は「英語」と答えるかもしれません。
しかし、実際に妻の様子を見ていて感じたのは、英語以上に大きな問題があるということでした。
それが孤独です。
夫は朝から会社へ出勤します。
会社へ行けば、現地社員や日本人駐在員、取引先など、誰かと話す機会があります。
仕事内容が難しくても、会社の中には自分の役割があります。
一方、妻は夫を送り出した瞬間から、一人の時間が始まります。
日本にいれば、実家へ行ったり、友人とランチをしたり、元同僚と連絡を取ったりできます。
少し外へ出れば、日本語が聞こえます。
店員に質問することも、病院へ電話することも、それほど大きな負担ではありません。
しかし海外では、その何気ない選択肢が一度になくなります。
知り合いがいない。
どこへ行けばよいか分からない。
英語で話しかけられるのが怖い。
車の運転にも自信がない。
日本の家族や友人とは時差がある。
その結果、一日中家の中で過ごすようになり、「今日はスーパーのレジの人としか話していない」という日が続くことがあります。
特にアメリカは車社会です。
地域によっては、スーパーやカフェへ行くだけでも車が必要になります。
日本では電車や徒歩で自由に移動していた人でも、アメリカでは運転に慣れるまで外出のハードルが高くなります。
道幅は広く、車線も多い。
左ハンドルで右側通行。
高速道路ではスピードも速い。
妻も最初は、一人で運転することに大きな不安を感じていました。
そのため、夫が帰宅するまで家から一歩も出ない日もありました。
家の中にいれば安全です。
英語を話す必要もありません。
しかし、その安心感と引き換えに、外の世界との接点は少しずつ減っていきます。
ここで知っておいてほしいのは、孤独を感じるのは自分だけではないということです。
社交的に見える駐在妻も、最初は同じように不安を感じていることがあります。
SNSでは、おしゃれなカフェや旅行、ホームパーティーなど、華やかな駐在生活ばかりが目に入ります。
しかし、写真に写っていない時間には、同じように孤独を感じたり、帰国したいと思ったりしている人もいます。
誰かの一番楽しそうな瞬間と、自分の何も予定がない一日を比べる必要はありません。
「何もしない日」が続くと心は少しずつ疲れていく
渡米して最初の頃は、仕事を辞めた反動もあり、
「しばらくはゆっくり過ごそう。」
と思うかもしれません。
日本で働いていたときにはできなかった昼寝をしたり、動画を見たり、ゆっくり料理をしたりする時間は、最初は新鮮です。
しかし、予定のない生活が何週間、何か月と続くと、少しずつ気持ちが変わってきます。
朝、夫を送り出す。
スマートフォンを見る。
日本のニュースやSNSを見る。
少し家事をする。
動画を見ているうちに昼になる。
夕食の買い物へ行くか迷い、結局家から出ない。
気がつくと夕方になり、夫の帰宅を待つ。
そんな一日が続くと、
「今日も何もしなかった。」
「私は何のためにここにいるのだろう。」
と感じやすくなります。
趣味がある人であれば、空いた時間を好きなことに使えるかもしれません。
しかし、妻のように「これといった趣味がない」という人も少なくありません。
そんなときに、
「新しい趣味を見つけましょう。」
と言われても、すぐには見つからないものです。
そもそも趣味は、無理に探して決めるものではありません。
最初から夢中になれることを探す必要はなく、少し気になることを試してみるだけで十分です。
海外生活で大切なのは、特別な趣味を持つことではありません。
毎日に小さな目的を作ることです。
「今日は違うスーパーへ行く。」
「午前中に30分だけ散歩する。」
「一人でカフェに入ってみる。」
「図書館の場所を確認する。」
「気になっていたパンを買ってみる。」
この程度でも構いません。
小さな予定が一つあるだけで、一日の過ごし方は変わります。
そして、その小さな行動が、
「自分で海外生活を進められた。」
という自信につながります。
子どもがいない駐在妻はどう過ごす?
子どもがいる家庭の場合、学校への送迎や習い事、公園、保護者同士の交流など、外へ出るきっかけが自然に生まれます。
一方、子どもがいない駐在妻の場合、毎日の予定は自分で作らなければなりません。
時間の自由度が高い反面、何もしなければ一日中家にいることもできます。
そこで、最初から予定を詰め込むのではなく、一日の基本的な型を作ることがおすすめです。
例えば、次のような過ごし方です。
7時:起床・朝食
夫と一緒に起きて朝食を取ります。
駐在生活では、夫の帰宅時間が遅くなることもあるため、朝の時間が夫婦で落ち着いて話せる貴重な時間になることがあります。
8時:夫が出勤
ここから一人の時間が始まります。
最初は、この瞬間が一番寂しく感じるかもしれません。
夫を見送った後にそのままソファへ座るのではなく、着替える、洗濯する、コーヒーを入れるなど、朝の行動を決めておくと生活のリズムを作りやすくなります。
9時:散歩や軽い運動
近所を歩くだけでも、気分転換になります。
安全面に不安がある地域では、アパートの敷地内やショッピングモール、ジムのランニングマシンなどを利用してもよいでしょう。
運動は、体力づくりだけではなく、気持ちを安定させるためにも役立ちます。
11時:スーパーや日用品の買い物
アメリカのスーパーには、日本では見かけない食材や商品がたくさんあります。
最初は商品を見るだけでも新鮮です。
毎回同じ店へ行くのではなく、現地スーパー、日系スーパー、アジア系スーパーなどを回ってみると、それだけで外出の目的になります。
店員と長く会話する必要はありません。
レジであいさつをして、支払いをして帰るだけでも、外の世界との接点になります。
13時:昼食
毎日家で食べる必要はありません。
週に一度だけでも、一人でカフェやファストフード店へ入ってみると、小さな達成感があります。
一人で外食することに抵抗がある場合は、最初はテイクアウトでも十分です。
自分で注文し、商品を受け取る経験が、少しずつ英語への自信につながります。
14時:自分のための時間
趣味がなくても、英語の勉強だけをする必要はありません。
気になることを少しずつ試してみましょう。
例えば、
- 日本のドラマや本を楽しむ
- 写真を撮りながら近所を歩く
- 現地の料理を作ってみる
- オンライン講座を受ける
- ブログや日記を書く
- 資格の勉強を始める
- ヨガやストレッチをする
- 旅行の計画を立てる
などです。
大切なのは、帰国後に役立つかどうかだけで判断しないことです。
その時間を過ごした後に、少し気分が良くなるなら、それで十分です。
17時:夕食の準備
現地の食材を使って新しい料理に挑戦するのも、海外生活ならではの経験です。
ただし、毎日手の込んだ料理を作る必要はありません。
駐在妻だから家事を完璧にしなければならない、という決まりはありません。
19時:夫が帰宅
夫婦でその日の出来事を話します。
妻にとっては、夫がその日初めてゆっくり話す相手になることもあります。
夫は仕事で疲れているかもしれませんが、妻がどのような一日を過ごしたかを聞く時間は、海外生活では特に重要です。
駐在妻が毎日を充実させるための過ごし方7選
1.朝のルーティンを作る
予定がない日は、起きる時間も遅くなりがちです。
しかし、生活リズムが崩れると、外へ出る気力も失いやすくなります。
毎朝決まった時間に起きる。
着替える。
コーヒーを飲む。
10分だけストレッチする。
その程度で構いません。
朝の行動を決めておくと、「今日は何をしよう」と考え続ける負担が減ります。
2.一日一回は家の外へ出る
外出の目的は、特別なものでなくて大丈夫です。
郵便物を確認する。
ゴミを出す。
近所を一周する。
スーパーで牛乳を買う。
カフェで飲み物を注文する。
家の外へ出るだけで景色が変わり、人の声を聞き、生活に区切りができます。
毎日必ず遠出する必要はありません。
「玄関の外へ出た」というだけでも、家に閉じこもる流れを変えられます。
3.趣味ではなく「気になること」を試す
趣味がない人にとって、「趣味を見つける」という言葉は意外と重く感じます。
何年も続けられることや、人に胸を張って言えることを探す必要はありません。
一度だけ試して、合わなければやめてもよいのです。
料理教室へ一回参加する。
図書館へ行く。
ジムの体験クラスを受ける。
現地のパンを食べ比べる。
写真を撮る。
刺しゅうキットを買ってみる。
興味が続かなければ、別のことを試せばよいだけです。
趣味は探して決めるものではなく、何度か試すうちに残ったものが、後から趣味になることもあります。
4.英語を勉強ではなく生活の道具として使う
英語が苦手な人ほど、
「正しい文章を話さなければ。」
「発音を間違えたら恥ずかしい。」
と考えてしまいます。
しかし、生活の中で使う英語は、テストではありません。
カフェで注文する。
スーパーで商品の場所を聞く。
店員にお礼を言う。
アパートの受付で荷物を受け取る。
短い一言で十分です。
最初から会話を続ける必要はありません。
伝わった経験を少しずつ増やすことが大切です。
一度自分で注文できると、次も同じ店へ行きやすくなります。
同じ店員と何度か顔を合わせれば、自然にあいさつができるようになることもあります。
英語は、完璧になってから使うものではありません。
使いながら少しずつ慣れていくものです。
5.一週間に一つだけ予定を入れる
毎日予定を詰める必要はありません。
まずは、一週間に一つだけ、家の外で行う予定を入れてみましょう。
火曜日は英会話。
木曜日はスーパー。
金曜日はカフェ。
このように予定が一つあるだけで、その日を基準に一週間のリズムができます。
予定がない日があっても問題ありません。
大切なのは、何週間も外との接点がない状態を作らないことです。
6.日本とのつながりも大切にする
海外へ来たからといって、現地の生活だけに集中する必要はありません。
日本の家族や友人と連絡を取ることも、大切な心の支えです。
ただし、時差があるため、思いついたときにいつでも電話できるとは限りません。
あらかじめ、
「毎週土曜日の朝に電話する。」
「月に一度、元同僚とオンラインで話す。」
と決めておくと、楽しみな予定になります。
一方で、SNSを長時間見続けることには注意が必要です。
日本の友人が仕事や食事を楽しんでいる様子を見ると、自分だけが取り残されたように感じることがあります。
SNSを見て落ち込む日が増えた場合は、見る時間を減らすことも必要です。
7.何もしない日があっても自分を責めない
生活を充実させるために、毎日外へ出たり勉強したりしなければならない、と考えると疲れてしまいます。
海外生活では、何もしていないように見える日でも、知らない環境の中で暮らしているだけで、心は多くのエネルギーを使っています。
英語の表示を読み、交通ルールを確認し、日本とは違う商品を選ぶ。
日常の小さなことにも緊張が伴います。
疲れた日は、家で休んでも構いません。
「今日は何もしなかった」ではなく、
「今日は休む日にした。」
と考えるだけでも、自分への見方が変わります。
子どもがいない駐在妻が友人を作る方法
子どもがいる場合は、学校や習い事を通して他の保護者と知り合う機会があります。
一方、子どもがいない駐在妻は、自分から接点を作らなければ、友人関係が始まりにくい傾向があります。
内気な人にとっては、知らない人へ話しかけること自体が大きな負担です。
そのため、いきなり大勢の友人を作ろうとしないことが大切です。
目標は、何でも話せる親友を作ることではありません。
まずは、時々ランチへ行ける人が一人できれば十分です。
同じ会社の駐在員家族を紹介してもらう
最も安心しやすいのは、夫の会社を通したつながりです。
赴任前に、同じ地域に住んでいる駐在員の家族を紹介してもらえないか、夫から会社へ相談してもらいましょう。
同じ会社の家族であれば、住んでいる地域、スーパー、病院、日本人コミュニティーなど、生活に必要な情報を教えてもらえる可能性があります。
ただし、会社のつながりだからといって、必ず深く付き合う必要はありません。
考え方や生活スタイルが合わないこともあります。
無理に仲良くしようとせず、必要なときに情報交換できる関係でも十分です。
教会や地域のESLクラスへ参加する
アメリカでは、教会や図書館、コミュニティーカレッジなどで、英語を母語としない人向けのESLクラスが開かれていることがあります。
英語力を高めることだけが目的ではありません。
毎週決まった場所へ行き、同じ人と顔を合わせることに大きな意味があります。
参加者も英語を学んでいる途中なので、間違いを過度に気にする必要がありません。
妻が参加したクラスにも、さまざまな国から来た人がいました。
文法が正しくなくても、みんな積極的に話します。
最初は聞いているだけでも構いません。
何度か参加して顔を覚えてもらうと、自然にあいさつや短い会話が生まれます。
日本人向けのコミュニティーを探す
日本人が多く住む地域では、日本人会、女性向けの集まり、地域の情報交換グループなどが存在することがあります。
現地の日本食スーパー、日系の美容院、レストランなどに案内が置かれている場合もあります。
オンライン上の地域グループから情報を探す方法もあります。
ただし、大人数の集まりが苦手な人は、無理にすべて参加する必要はありません。
一度参加して疲れてしまった場合は、少人数のイベントを選んでもよいでしょう。
大勢の中で積極的に話すより、一人か二人と落ち着いて話す方が合う人もいます。
日系スーパーや公共施設で小さく話しかける
内気な人にとって、知らない人へ突然声をかけるのは簡単ではありません。
それでも、日本語が聞こえたときに、
「日本の方ですか。」
「こちらには長く住んでいるのですか。」
と一言聞いてみることで、つながりが生まれることがあります。
毎回うまくいくわけではありません。
相手が急いでいることもあります。
しかし、同じように友人を探している駐在妻であれば、話しかけてもらったことを喜んでくれる可能性もあります。
最初から連絡先を交換する必要はありません。
少し話せただけでも、十分な一歩です。
現地の習い事や運動クラスを利用する
会話だけを目的にした集まりが苦手な人は、何かを一緒に行うクラスがおすすめです。
ヨガ、料理、手芸、フィットネスなど、活動の内容が決まっている場では、会話が途切れても気まずくなりにくいからです。
英語をすべて理解できなくても、周囲の動きを見ながら参加できるクラスもあります。
そこで親しい友人ができなかったとしても、毎週外へ出る理由になります。
友達はたくさん作らなくていい
駐在生活を楽しくするためには、友達をたくさん作らなければならないと思うかもしれません。
しかし、人数はそれほど重要ではありません。
知り合いが増えるほど、付き合いが負担になる場合もあります。
ランチ会やホームパーティーへの参加が続き、
「断ったら関係が悪くなるのではないか。」
と疲れてしまうこともあります。
内気な人は、大勢のグループに無理に合わせるより、一対一で落ち着いて話せる相手を見つける方が向いています。
月に一度ランチへ行ける。
困ったときに質問できる。
たまにメッセージを送れる。
そのような相手が一人いるだけでも、海外生活の安心感は大きく変わります。
夫婦で話しておきたいこと
駐在妻の過ごし方は、妻一人の努力だけで決まるものではありません。
夫の協力も必要です。
夫は新しい職場で慣れない仕事をし、英語を使い、毎日大きなストレスを抱えているかもしれません。
一方、妻も仕事を辞め、知り合いのいない環境で一日を過ごしています。
どちらも大変ですが、ストレスの種類が違います。
夫は、
「妻は仕事をしていないのだから時間がある。」
と思うかもしれません。
妻は、
「夫だけが新しい仕事や人間関係を得て、自分だけが何もない。」
と感じるかもしれません。
このすれ違いを放置すると、夫婦関係にも影響します。
例えば、週に一度は妻が行きたい場所へ一緒に出かける。
夫の会社の人へ、家族同士の交流ができないか聞いてみる。
妻が一人で運転できるようになるまで練習に付き合う。
一日の終わりに10分だけでも話を聞く。
こうした小さな協力が大切です。
妻側も、夫に察してもらうことだけを期待するのではなく、
「今日は一日誰とも話さなくてつらかった。」
「今週末は外へ出たい。」
「一人で運転するのが怖いから練習に付き合ってほしい。」
と具体的に伝えることが必要です。
海外駐在は夫だけの仕事ではありません。
夫婦で新しい生活を作る共同プロジェクトと考えると、お互いの状況を理解しやすくなります。
駐在期間を「失った時間」にしないために
仕事を辞めて海外へ来ると、帰国後のキャリアが不安になることがあります。
「数年間の空白ができてしまう。」
「もう一度働けるのだろうか。」
「同年代の友人はキャリアを積んでいるのに、自分だけ遅れてしまう。」
そう感じるのは自然なことです。
ただし、駐在期間に得られるものは、資格や職歴だけではありません。
知らない国で生活を立ち上げる。
英語が苦手でも病院や店で用事を済ませる。
一人で運転できるようになる。
異なる文化や価値観に触れる。
自分から人との接点を作る。
これらは、日本にいたときには得にくかった経験です。
もちろん、無理に駐在期間を成長のための時間にしなくても構いません。
資格を取らなくてもよいですし、英語が大きく上達しなくても失敗ではありません。
海外で夫婦の生活を支え、慣れない環境で毎日を送ったこと自体が、十分に価値のある経験です。
それでも将来に不安がある場合は、少しずつ帰国後につながる行動を始めてもよいでしょう。
オンライン講座を受ける。
以前の仕事に関係する情報を読む。
元同僚と連絡を取る。
ブログや日記で海外生活を記録する。
興味のある資格について調べる。
最初から大きな成果を求める必要はありません。
「帰国後の自分のために、週に一時間だけ使う。」
その程度から始めれば十分です。
よくある悩みQ&A
Q.駐在妻は本当に暇ですか?
予定を作らなければ、自由な時間は多くなります。
しかし、時間があることと、心に余裕があることは別です。
仕事や人とのつながりを失ったことで、何をすればよいか分からなくなる人もいます。
まずは一日に一つ、小さな予定を作ることから始めてみてください。
Q.趣味が何もありません。何をすればいいですか?
無理に趣味を作る必要はありません。
散歩、スーパー巡り、カフェ、料理、写真、オンライン講座など、少し気になることを一度試してみましょう。
続かなければやめて構いません。
いくつか試した中で、自然に続いたものが後から趣味になることもあります。
Q.英語が話せなくても生活できますか?
最初は苦労しますが、すべてを流暢に話す必要はありません。
短いフレーズ、翻訳アプリ、身ぶり手ぶりでも、多くの場面は対応できます。
よく使う表現だけを事前に用意し、同じ店や施設を繰り返し利用すると、少しずつ慣れていきます。
Q.友達ができないときはどうすればいいですか?
焦って大勢の友達を作ろうとしないことです。
ESLや夫の会社のつながり、日本人コミュニティーなど、同じ人と繰り返し会える場所へ参加してみましょう。
最初の目標は、あいさつできる人を一人作ることでも十分です。
Q.夫に不満を感じてしまいます
仕事を辞めて海外へ来た妻が、
「夫のために自分の生活を手放した。」
と感じることは珍しくありません。
気持ちを我慢し続けるのではなく、何がつらいのか、夫に何をしてほしいのかを具体的に伝えましょう。
夫婦だけで解決するのが難しいほど気持ちが落ち込んでいる場合は、会社の相談窓口や医療機関など、外部の支援を利用することも大切です。
まとめ|駐在妻の過ごし方は、小さな予定を作ることから始まる
夫の海外駐在に帯同するために、仕事を辞め、家族や友人と離れ、知らない国で生活を始める。
それは、決して「夫について行くだけ」の簡単な選択ではありません。
夫にとって海外駐在が仕事上の挑戦であるように、妻にとっても人生を大きく変える挑戦です。
最初から海外生活を好きになる必要はありません。
英語を流暢に話せなくても構いません。
社交的になって、大勢の友達を作る必要もありません。
まずは、
朝決まった時間に起きる。
一日に一度だけ外へ出る。
いつもと違うスーパーへ行く。
カフェで自分の飲み物を注文する。
週に一度、誰かと話せる予定を作る。
そのような小さな行動から始めてみてください。
駐在生活が楽しくなるかどうかは、単純な行動量だけで決まるものではありません。
外へ出られない日があっても、友達がなかなかできなくても、自分を責める必要はありません。
大切なのは、自分に合ったペースで、少しずつ生活の範囲を広げていくことです。
仕事を辞めたことで、これまでの自分の役割を失ったように感じるかもしれません。
しかし、仕事をしていないからといって、あなたの価値がなくなるわけではありません。
新しい国で生活を立ち上げ、夫婦で困難を乗り越え、自分なりの居場所を見つけていく。
その経験は、帰国後もきっと残ります。
海外駐在の期間を、無理に「最高の思い出」にしなくても構いません。
つらかった日も、何もできなかった日も含めて、すべてがあなた自身の経験です。
私たち夫婦も、最初からアメリカ生活を楽しめていたわけではありません。
それでも、小さな外出や人との出会いを積み重ねることで、妻は少しずつ自分なりの過ごし方を見つけていきました。
約8年間の駐在生活を終えた今、妻は、
「あの経験があったから、以前より新しいことを怖がらなくなった。」
と話しています。
今、毎日何をして過ごせばよいか分からなくても大丈夫です。
まずは明日、少しだけ家の外へ出てみてください。
その小さな一歩が、海外で自分の生活を取り戻すきっかけになるかもしれません。


